君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 樹くんが話している間に、告白への覚悟を決めようと思っていたのに。

 彼からそう言われてしまって、私は焦った。


「えっと、私は後の方で大丈夫なので」

「いや、俺の方こそ後でいいって」


 譲ってくれない樹くん。

 ほ、本当に言いにくいことで、彼もなかなか踏み出せない感じなのかな……?

 早く聞きたいような、怖いような。

 でもどちらにしろ、私だってまだ覚悟ができていないわけで。


「よし、栞。じゃあ公平にじゃんけんで決めよう」

「え?」

「じゃんけんで負けた方が、最初に言いたいこと言う。それでいい?」


 じゃんけんかあ……。

 私そういうの弱いんだよね。

 逆に樹くんは強そうだし、なんとなく負ける気がするなあ。

 でもじゃんけんの間に、心の準備をすることにしよう。

 今日は絶対に言うって決めたんだから、負けたら悩まずに、もうはっきり言おう。

 樹くんに「好きです」って。


「うん、わかった!」


 というわけで私たちはじゃんけんをした。

 結果は、一度もあいこになることなく、私の負け。

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