君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「樹くんが、私のこと……? お互い好き同士?」


 信じられなくて、かすれた声でそう呟く。

 すると悟くんは顔をしかめた。


「栞ちゃんも鈍いね。……まあ俺の時も、鈍くて全然気づいてくれなかったもんな」

「俺の時も?」


 ますますわけのわからないことが増えて、首を傾げてしまう。


「いやそれはもうどうでもいいや。栞ちゃん、あいつに手術を受けるように言ってくれないかな。俺からのお願い」

「え、私が……?」

「うん。栞ちゃんの言うことなら、聞いてくれる気がする。俺だってさ、あいつが死ぬのを待つだけなんて受け入れたくないんだよ……」


 悟くんは、どんどん弱弱しい声になりながら言った。

 仲のいいいとこ同士だもんね……。

 私よりもずっと長い間、悟くんは樹くんと接しているんだ。

 どちらの方が悲しいとかそういうことではない。

 でもきっと、悟くんの日常には樹くんの存在が根付いている。

 そんな存在がもしいなくなったら、心にぽっかり穴が開いてしまうだろう。

 悟くんは、樹くんが私を好きらしいと言ってくれた。

 正直、そう言われてもまだ実感が湧かない。

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