君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 彼が私の言葉に返事をしてくれたことが、心から嬉しい。

 ――樹くんは私だって知ってたんだもんね。

 でもそんなに最初から知っていたとはね。


『ええ、そんなに早くから私だって知ってたの? なんか樹くんだけずるくない?』

『あはは、だって気になっちゃったんだもん。相手が同じ一年のかわいい女の子でよっしゃーって思ったんだよなあ』

『か、かわいいだなんて……。嬉しいけど。でも、言ってくれればよかったのに』

『いや、なんか言ったら終わりのような気もしてさあ。栞真面目そうなタイプに見えたし、俺みたいなチャラそうなやつが相手だったら嫌じゃないかなって』

『そんなことは思わない……たぶん。でも、同じクラスになった時住む世界が違う人だろうなとは思っちゃった……』

『ほら! やっぱり栞が俺だって知らなかったから、こんなに続いたんだよ~』


 そんな他愛のないやり取りが、しばらく続いた。

 書き込む前までは、ずっと悲しそうに力なく微笑んでいた樹くんの表情が、いつものようにいきいきとし始めた。


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