君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
『いつもこのノートに励まされてた。誰かもわからないあなたとのやり取りが本当に楽しかった』


 私がそう書くと、樹くんの表情が少し強張る。

 今までスラスラと返事を書いてくれていた彼だったけれど、恐る恐るゆっくりと、こう記した。


『うん。俺もだよ』

『そして樹くんを好きになった時も、あなたに相談して。前向きな気持ちにしてくれた。だから告白しようって思った』

『そうだったんだ』

『だけどずっと、ノートの向こうのあなたが病気だって知ってから、本当に心配していた。何の病気かは分からないし、私が病気を治すことの役に立てるわけなんてないけど、とにかくあなたに会いたいと思った。あなたが苦しんでいるのなら、そばにいたいってただ思った』


 樹くんはしばらくの間、ペンを取らなかった。

 私の書き込みをただじっと眺めている彼は、歯がゆそうな表情をしているように見えた。

 そして、震える手で樹くんがペンを持って、ノートにこう書き込み始めた。

 ――しかし。


『俺の病気、本当に厄介らしいんだよ。今は大丈夫だけど、手術しなければそのうち死ぬんだって。それで』


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