君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
エピローグ
 この図書館ができたのはちょうど一年くらい前だったと思う。

 確かあの時は樹くんと一緒に来て、本の多さや充実した設備にふたりで驚いた覚えがある。

 私が今座っている二人掛け用のソファには、高校生や大学生のカップルばっかりが座っていて。

 私はここはお呼びじゃないって思ったんだけど、樹くんが「一緒に座ろうよ」ってあっけらかんと言ったんだよね。

 もう、一体どういうつもりで言ってるの?って私は慌てたっけ。

 結局ソファは空いてなくて座れなかったんだけど、あの時樹くんはこう言った。


『今度またふたりで来よう。そしたらここに座ろうよ』


 って。

 私はそのソファにひとりで座りながら、一年前のそんな出来事を思い出していた。

 そして、本棚から取ってきた一冊の本を開く。

 タイトルは「何度記憶をなくしても、きみに好きと伝えるよ。」。

 これもちょうど一年前に樹くんと来た時に、本棚から見つけた本だった。

 すごく前に読んだことがある話だったけれど、内容は忘れちゃっていた。

 でもとても素敵な話だったってことだけは覚えていたから、一年前に見つけた時もまた読もうって思っていた本だ。

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