君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 六時間目は美術だったし、作業なら眠くならないだろう。

 そう思った私は五時間目が終わるチャイムが鳴ったら、ベッドから起きることを決めた。
 
 とりあえずそれまで寝っ転がったまま休もうっと。

 私は寝返りをうった。

 今まではベッドに面した窓の方に顔を向けていたけれど、その反対側に。

 寝相が悪かったのが、ベッドの端っこのように寄ってしまっていたので、真ん中の方に移動するつもりで。

 すると、私の瞳にあり得ないものが映った。

 一瞬、何が起こっているのか分からなかった。


「えっ……?」


 目の前に、肘枕をしながら私の顔をのぞき込む樹くんの顔があった。

 私と同じベッドの中に、寝そべっている彼。

 布団を共有している状態で。


「おはよ、栞」


 呆然とする私とは対照的に、樹くんはニッと笑って、平然として言う。

 その瞬間、我に返った私は飛び起きた。


「ええええ!? い、樹くんっ? な、なんでっ!?」


 静かにしていなければいけない保健室の中だというのに、私は大声をあげてしまう。

 だ、だって!

 同じ布団の中に男の子がいたんだよ!?

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