君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 あのままずっと手を繋がれていたら、たぶん頭の中はいまだに混乱していたと思うから。


「どこか行きたいとこ、ある?」


 ショッピングモールに入ってすぐに、樹くんに尋ねられた。

 至近距離で顔を覗き込みながらだったので、ドキドキしてしまう。

 えっと……。

 よくわからないまま連れて来られちゃって、どこに行きたいとか特にないんだけど……。

 でも何か言わないと申し訳ないよね。

 どこがいいんだろう。

 琴子となら、雑貨屋に行ったりアクセサリーショップに行ったりするけれど、男の子はそんなのつまらないよね。

 男の子も楽しめそうなところ……あっ!


「ほ、本屋……」


 それしか思いつかなかった。

 本ならば、男女問わず楽しめるはずだ。

 だけど言ってすぐに後悔した。

 樹くんが本を読むタイプとは失礼ながら思えなかったから。

 あ、でも漫画なら読むかなあ……。


「本屋かあ。いいね、行こ」


 私の心配をよそに、樹くんはあっさりと了承してくれた。

 本屋さんでいいんだ……。

 それはよかったけど、よく考えたら一緒に行ってどう過ごしたらいいんだろう。

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