君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 お互い別々に、行きたい売り場に行けばいいのかなあ。

 それだと気が楽だな。

 あ、でも一緒にここに来た意味がないような……。

 なんてことを考えているうちに、モールの二階にある本屋さんに私たちはたどり着いた。

 ――すると。


「栞は、本屋さんのどの売り場に行くの?」

「えっ……。ま、まずは小説の新刊のところ……」


 聞かれたので、素直に答える私。

 樹くんはどこへ?と尋ねようとしたら、その前に彼はこう言った。


「ふーん。じゃあ俺もついてくわ」


 微笑みながらそう言って、私の隣に立った。

 漫画のコーナーにでも行くんだろうと勝手に思っていた私は戸惑ったけれど、別に嫌なわけじゃなかったので「そ、そっか」と言って新刊コーナーへ向かって歩き出した。

 その後を樹くんはついてきた。私の歩調に合わせるかのように。

 なんだか落ち着かないなあ。

 そう思いつつも、新刊の棚にずらりと平積みされた本たちが目に入ったら、いつものようにわくわくした気持ちになってきた。

 ……あ!

 この人大好きな作家さんだ!

 新しいお話出したんだ!

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