君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 私より一回りくらい大きな手のひら。

 包み込まれているような感じがして、心臓の鼓動と共に安心感も覚えてしまった。

 私を引っ張りながらも、決して強引じゃない足取りで樹くんが向かったのは。


「カフェ……?」


 そう、レストラン階の端っこに位置していた、お洒落な感じのカフェだった。

 店舗入り口のショーケースの中には、フルーツがたくさん乗ったタルトや、ふわふわのシフォンケーキが並んでいる。


「うん、そう。いい?」

「えっ……。う、うん」


 甘いものも、それに合うコーヒーや紅茶も私は大好きだ。

 もちろん、かわいらしいカフェも。

 だけどこういう場所は、女の子グループや彼女に付き合わされたカップルが来るイメージがなんとなくあった。

 だから樹くんが行きたい場所がカフェだったことを、意外に思った。

 店員さんに席を通されて、メニューを広げる私たち。

 メニューにはケーキの写真がついていて、どれもおいしそうに見えて迷ってしまう。


「どれにしようかな……」


 思わずそう呟いてしまう。

 すると樹くんは、メニューの写真を指差しながらこう言った。


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