君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 まあ、別に隠す必要はないからいっか。


「早退したのはね、しようと思ってしたんじゃないんだけど……。ちょっと誘われて」

「誘われた!? なんだと! 詳しくっ」


 勢いよくそう言いながら、琴子が私に迫ってきた。

 私はタジタジになりながらも、早退した時の出来事を話した。

 ――すると。


「授業をサボってカフェデート!? 何それっ。キラキラ少女漫画かよっ!」


 予想通り、琴子は興奮した様子で大声を上げた。

 現在図書室に私たち以外誰もいなかったからいいものの、本来静かにしなければいけないこの空間で叫ぶなんて、あってはならないことだ。


「デ、デートなんて。そんなんじゃないよ……」


 デートっていう響きが、自分にとっては不釣り合いすぎて私は首を横に振りながら言う。


「男の子とふたりで出かけたんならデートじゃん!」

「そ、そうなの?」

「そうだよっ。しかもあのかっこいい樹くんと! もう栞ってば隅に置けないんだからー!」


 相変わらずテンション高めに言う琴子。

 確かにデートと言えばデート……なのかな?

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