君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 でも樹くんは友達が多いし、特別な意味はないと思うんだよね。

 たまたまあの日、私がその場にいただけで。

 そう思い込んだ私だったけれど、琴子はからかうように私を見ながら、肘で小突いてきた。

 ――そして。


「ねえ、やっぱりこの前言った通りさ。樹くんって栞のこと狙ってんじゃないの~?」


 とんでもないことを言ってきた。

 あり得なさすぎて、私は勢いよくぶんぶんと首を横に振った。


「そ、そんなことあるわけないよっ」

「なんで? 栞結構かわいいし、あると思うんだけどなあ。よし、もう付き合っちゃお!」

「ええ!? だからないってばー! もう、琴子は話が早いんだからっ」


 まだまったくそういう展開にはなっていないというのに、すっ飛ばしたことをいう琴子に私は呆れてしまう。

 ――琴子は本気でそう思ってくれているかもしれないけれど、やっぱりそんなことないよね。

 樹くんがとっても優しい人だってことは昨日分かった。

 だから、クラスであぶれている私を可哀そうに思って、気を遣ってくれたのかもしれない。

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