君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 何日か前に私が書き込んでから、ノートを開いていなかった。

 いつものペースなら彼から返事は来ているはずだ。

 ――そういえば、何の話をしてたっけ。

 私なんて書いたんだったかなあ。

 ぼんやりと思い出そうとしながら、私はノートを手に取って開いた。

 すると私が書いた字の下に、見慣れた彼の文字が新しく書き込まれていた。


『気晴らしができて、気分が落ち着いたよ。相談はできなかったけど』


 そう書かれていた。

 その前のやり取りを見直す私。

 ――そうだった。

 重大な決断に迫られていてそんな時どうする?って彼に聞かれて、『誰かと気晴らしに遊んだり、相談したりしてみるとか?』って私は返事をしたんだ。

 そっか、気晴らしができて気分が落ち着いたんならよかったなあ。

 相談はできなかったってあるけど、人に言いにくいことなのかも。

 そう考える私だったが、『気晴らし』と彼が書いた文字を再度見て、ハッとする。

 ――気晴らし、って。

 樹くん、私とショッピングモールに行った後こう言ったんだ。

 『いい気晴らしになったっす』って。

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