君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 とても小さな声のお礼になってしまった。

 聞こえていないかもしれないと不安になって、思わず樹くんの方を見る。

 ――すると。


「うん」


 樹くんは微笑んだまま頷いた。

 頷いてくれた。

 そして「じゃーね」と軽い口調で言って、教室から出て行ってしまった。

 お礼、聞こえていたみたいでよかった。

 それと、私を気遣ってくれた彼の言動がやっぱり嬉しかった。

 だけどやっぱり、私と樹くんは住む世界が違う。

 優しい彼が、たまたま目に留まった私を助けてくれただけ。

 樹くんとは、ただのクラスメイト。

 私と彼が、仲良くなることはきっとないだろう。


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