君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 瀬尾さんが大きな声を上げたから、周囲にいたみんなは興味深そうな顔をして私を見ていた。

 彼らの表情は、決して私を馬鹿にするような感じでも、嫌悪感を向ける感じでもなかったと思う。

 ――たぶん。

 少なくとも私にはそう見えた。

 ただ彼らは、学年の人気者と、すみっこ暮らしの私がなんで一緒にいるんだろう?ってただ疑問だったんだと思う。

 だけど私は、身構えてしまった。

 ――馬鹿にされるんじゃないかって。

 お前なんかがなんで、樹くんと一緒にいるんだって。

 どうしても、昔みんなの前で人に拒絶された思い出が、そういう風な想像に結びつけてしまう。


「あ……」


 私は固まって何も言えなくなってしまった。

 ――うん、樹くんと遊びに行くんだ。

 そんな風に、笑って言えばいいんだって思う。

 何も悪いことはしていないんだから、素直にそう言えばいいんだって。

 こんな風に自分で壁を作ったら、余計拒絶されてしまうのに。

 だけど震えてしまって、口がどうしても動いてくれない。

 ――すると。


「えっ。好本さんどうしたの……!?」


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