君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 私のおかしな様子に気づいたらしい、瀬尾さんが眉をひそめた。

 きっと彼女にとっては訳が分からないと思う。

 なんでちょっと質問しただけなのに、泣きそうな顔になっているんだろうって。

 たぶん、隣にいる樹くんだって、きっと困っている。

 ――私のことを変だって思ってるかもしれない。

 そんな考えにまで行きついてしまった私。

 怖くて、樹くんの方を見ることができず、私は俯いてしまった。

 樹くん、私を誘ったことを後悔してるかも。

 やっぱり今日出かけるのやめようって思ってるかも。

 ――しかし。


「うん、そう。俺たち今日遊びに行くんだ」


 頭上から聞こえてきたのは、樹くんのはっきりとした声だった。

 とても楽しそうな声音に聞こえた。

 私は思わず、顔を上げて彼の顔を見る。


「この前栞と遊んだとき、すげー楽しかったから。また行くの」


 樹くんは満面の笑みを浮かべていた。

 とても嬉しそうな表情だった。

 思ってもみない樹くんの言動に、私は目を見開いて彼を見てしまう。

 すると、瀬尾さんは戸惑ったような顔をしながらこう言った。


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