君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 すると樹くんは、太鼓のような形のゲーム機が置かれていたり、音楽に乗って光る球に合わせてボタンを推すようなゲームが置かれているコーナーに、私を連れて行った。

 確かこれって、音ゲーってやつだよね。

 テレビやCMで見たことがあるから、私も知っていた。


「栞、音楽苦手じゃないでしょ?」

「あ……。うん、小学生の頃、ピアノ習ってたから……」


 中学生になった時に、練習時間が取れなくなりそうになったからやめてしまった。

 だけど、ピアノを弾くのは楽しかったし、音楽を聴くのも大好きだ。

 流行りのJ―POPを流しながら勉強したり、物語に合うようなクラシックを流して読書にふけることも多かった。


「やっぱり? 前音楽のテストでピアノ弾いた時、結構うまかったからそうなんかなって」

「え……」


 何か月か前にそんなテストがあった。

 好きな楽器で好きな演奏をするっていう、緩いテストだ。

 私はピアノくらいしか楽器には触れたことがないから、昔の記憶を呼び起こしながら頑張って「エリーゼのために」を弾いたんだけど……。

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