君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 それまでは一緒にプレイをしているのに私が足を引っ張ってしまったら申し訳ないなあという不安があったけれど、よく考えてみればこれって単なるゲームだったんだ。

 琴子や家族なら、私が下手でもきっと楽しく笑い飛ばしてくれる。

 きっと私だって、それはそれで楽しい気持ちになれる。

 ――樹くんにも、それでいいんだよね?

 肩の力が抜けた私は、バチを持って流れてくる音楽と、画面に表示される「ここで叩く」という合図に合わせて、気負わずに演奏ができた。

 変なことは考えずに、ただ音楽に合わせて太鼓を叩けた。

 私はゲームを純粋に楽しめたんだ。

 すると、一曲終わった時に。


「すごいじゃん栞! ほとんどノーミスだよ!」


 クリア!と表示された画面を見て、樹くんがはしゃいだ様子で言う。


「そ、そうなの!?」


 よくわかっていなかった私は、驚いた。

 確かにリズムに合わせたちゃんと叩けたなあとは思ったけど……。

 ミス、そんなに少なかったんだ。

 でも得点を見ると、樹くんの方がちょっと高い。


「樹くんだって、すごいみたいじゃない?」

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