君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「いや、だって俺は何回もやったことがあるし。でも栞は初めてじゃん?」

「――うん」

「初めてこれってすげーよ。こんなに上手な人、見たことないわ。隣で見ててやべーって思った」

「え……」


 それは何気なく言った、単なるお世辞かもしれない。

 だけど、人付き合いが苦手で、真面目なことしか取り柄がない私にとって、その誉め言葉は絶大なインパクトがあった。

 私とゲームをするのが楽しいって、樹くんが言ってくれているようにも思えて。

 ――樹くん、私と一緒に居るのを本当に楽しんでくれているの……かも。

 樹くんのその言動は、私にそう思わせてくれたんだ。

 その後、次に待っている人がいなかったのをいいことに、太鼓のゲームを何回かやった私たち。

 1プレイごとに樹くんは「やった、中級モードもクリアじゃん」「俺、何度もやってるのにすぐに栞に追い越されそう、あはは」なんて、楽しそうに言っていた。

 私もとても楽しかった。

 変な緊張は一切感じず、純粋に樹くんとのゲームが楽しいと思えた。

 そして太鼓のゲームを終えた後、樹くんは私をプリクラのブースへと連れて行った。


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