君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「一緒に撮ろ。撮ったことある?」

「プリクラは中学生の頃に撮ったきりだなあ……」


 誘う樹くんに、苦笑いをして答える。

 少し気後れしてしまった。

 あの事件以来、自然と俯いてばかりの私は、写真に撮られることもなんとなく苦手になっていた。


「よし、じゃあ久しぶりに撮ろ。仲良くなった記念にさ」

「記念……」


 今日、樹くんと遊んだ記念のシールを今から作る。

 彼と打ち解けられたということが、形に残る。

 この前保健室から抜け出した後の出来事を、たまに思い出しては信じられない気持ちになることがあった。

 人とうまく話せない私が、本当にあんなに楽しい時間を過ごせたのかなって。

 でもきっと、プリクラとして形に残せば。

 信じられなくなるたびにそれを眺めれば。

 きっと私は、過ごした時の気持ちを鮮明に思い出せるんじゃないか。

 なんだかとても素敵なことに思えた。


「う、うん。……撮りたい」


 おずおずとそう言うと、樹くんは目を細めて優しく微笑んだ。

 そしてふたりで二百円ずつ、機械にお金を入れてから撮影ブースへと入る私たち。

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