君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 美白モードとかデカ目モードとか撮影ポーズだとか、最初に様々な選択肢があった。

 樹くんも「いつも友達が選んでるからよくわかんね」なんて言っていた。

 もちろん私もよくわからないので、最初に選ばれていたモードで撮影することにした。

 撮影の合図に合わせて、カメラに視線を向ける。

 ――ど、どんな顔をすればいいかわからないや。

 そう思っている間にフラッシュがたかれ、撮影した画像がすぐに画面に表示された。

 樹くんは自然な笑みを浮かべていたけれど、私は能面のように怖い顔をしていた。

 すると樹くんが私の顔を見て噴き出した。


「ははっ、栞。そんな無表情にならなくっていいのに」

「だ、だって自然に笑うの難しくて……」

「そっか。じゃあ画面に映った俺の真似すればいいんじゃね」

「真似?」

「うん、ほら。もっと近くに寄ってみて」


 そう言いながら、私に近寄る樹くん。

 私の頬と彼の頬がくっつきそうになるくらい、近くに。

 ――えっ。

 い、樹くん。近すぎない……?

 ほのかに、樹くんの匂いがした。

 シャンプーの香りかな?

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