君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「……あ」


 うん、本当は自然に笑いたかった。

 樹くんと一緒に居るのが、楽しいよって表情で表したかった。

 ――でも。


「あんなに近寄られたら、緊張して笑えない……」


 思わずぼそりとそう呟いてしまった。


「えっ? なんて?」


 樹くんにはちゃんと聞こえていなかったようで、彼は首を傾げる。

 私は慌てて首を横に振った。


「な、なんでもないよ」

「そう? ……あれ。ってか、プリクラの栞顔赤くない? 熱でもあるの?」

「えっ……。あっ、熱はないですっ! 大丈夫!」


 そう否定しながらも、私はとても嬉しい気持ちでいっぱいだった。

 樹くんは「笑おうとしてくれるのが嬉しい」って言ってくれた。

 それって、私が楽しもうとしているのを、彼は喜んでくれてるってことだから。


「それならいいけどさ。はい、シール」


 私に印刷されたプリクラを手渡す樹くん。半分に切ることもせずに、そのまま渡してきた。


「あれ? 半分こしないの?」

「俺は画像ダウンロードしたからシールはいいや。貼るとこないしさ」

「そうなの?」


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