君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 だけど私は自分の席に座ったままお弁当を取り出し、いつも通り静かに昼食を始めようとした。

 ――すると。


「ねえ、好本さん」


 いきなり話しかけられて、机の上のお弁当に視線を合わせていた私は、驚きながらも顔を上げる。

 話しかけてきたのは瀬尾さんだった。

 真剣な表情で私を見ている。

 そういえば前に樹くんと遊びに行こうとした時、なんだか私たちのことを気にしていたっけ……。

 瀬尾さん、樹くんと結構仲が良かったよね。

 よく一緒に居るのを見るから。

 派手目な瀬尾さんは、正直ちょっと苦手なイメージがあった。

 別に誰かをいじめたりとか意地悪をしたりとか、そういう現場を見たわけではない。

 でも、クラスメイトや先生にも、常にはっきりとした物言いをする彼女は、私とは対照的で。

 私なんかうじうじしたタイプ、瀬尾さんは見ていてイライラするんじゃないかなとすら思える。


「は、はい」


 私は緊張しながらもやっとそう返事をした。

 すると瀬尾さんは、私をマジマジと、興味深そうに見つめてきた。


「最近、樹と仲いいよね?」

「あ……」


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