君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 だけど私と樹くんは、最近仲良くなった。

 それは紛れもない事実だ。

 自分のためにも、樹くんのためにも、正直に言わないとおかしいんだ。

 すると瀬尾さんは、目を見開いて驚いたような顔をした。

 そして口を開く。

 私は彼女の言葉をいろいろ想像して、拳をぎゅっと握りしめる。

 しかし、瀬尾さんから放たれた言葉は、思いもしないものだった。


「樹ー! マジで好本さんと仲良くなってんじゃん! なんでっ! ずるい!」


 瀬尾さんは首をぐるんと樹くんの方へ向けて、そう叫んだのだった。

 ――え?

 ずるい、ってどういうこと?

 意味が分からず、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになる。

 混乱していると、樹くんが私の席の方へと駆け寄ってきた。

 そして呆れたような顔をしてこう言った。


「だから何度も言ってんじゃん。俺栞と仲良くなったんだーって。なんで信じてくんないの?」

「だって! 好本さんだよ!? 知的ミステリアスかわいい好本さんだよ!? あたしだってお近づきになりたかったのに、ずるいっ! デートなんかする仲になっちゃってさあ!」


< 83 / 216 >

この作品をシェア

pagetop