君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 樹くんに向かって、興奮した様子で瀬尾さんは言った。

 え、えーと?

 瀬尾さんの言葉の内容からすると、彼女が私と仲良くしたかった……みたいに思えるんだけど。

 まさか?

 いまだに混乱して私は目をぱちくりさせてしまう。

 すると樹くんは、瀬尾さんをからかうように小突いた。


「ね、聞いた? こいつ前から栞と仲良くなりたかったんだって。いつもひとりで本を読んでる好本さんマジ知的、かわいい顔して誰とも群れない感じ超憧れる、なんてよく言っててさー。マジ笑える」

「い、樹っ! 言うなあっ!」


 瀬尾さんは顔を真っ赤にして、大声を上げる。

 でも樹くんの言葉を否定したわけじゃなかった。

 ってことは、本当なの?

 瀬尾さんが、私と仲良くなりたかったって……。

 瀬尾さんはごほん、と一回咳ばらいをすると、私の方を向いて、照れ臭そうにこう言った。


「あ、あの……。樹に言われちゃったんだけど、私好本さんのこと気になってて……。で、でもひとりでいるのが好きなのかなあ、私みたいなアホみたいなタイプうざいよなあとか考えちゃって、声かけられなくって、その」

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