君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「でももし本当なら私もワンチャンあるんじゃね?と思ってさー。勇気を出して話しかけてよかったー!」

「勇気を……」


 瀬尾さんみたいな強気そうな人でも、打ち解けていない人と話すときは勇気がいるんだ。

 驚いたと同時に、とても親近感が湧いた。

 思ったほど、遠い存在ではないのかもしれない。

 人気者の樹くんも、派手で目立っている瀬尾さんも。

 そう思った途端、私はとても嬉しくなった。


「わ、私もっ……。瀬尾さんと、仲良くなりたいっ」


 私は声を震わせながら言った。

 ――勇気を出して。

 すると瀬尾さんは、私の手を両手でがしりと、包み込むように握ってきた。


「マジ!? やったー! じゃあ、あたしら今日友達ね! ねえ今日放課後暇!? 早速遊びに行こ!」

「あの、今日栞は俺と遊ぶ予定なんですけど」


 興奮した様子で私を誘ってくる瀬尾さんの肩をトントンと叩き、樹くんが苦笑を浮かべながら言う。

 そうだ、今日は確か樹くんと一緒に本屋さんで買い物をする予定だった。


「そうなの? じゃ、ちょうどいいじゃん。三人で遊ぼーよ」


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