君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 まったく怯む様子のない瀬尾さん。その様子がなんだか面白くて私は「ふふ」と笑ってしまった。


「えー。栞はどうしたい?」

「わ、私は……。瀬尾さんも一緒がいいな」


 樹くんとふたりきりももちろん楽しいけれど、こうして友達になってくれた人が遊びに誘ってくれたのだから、断るなんてとんでもない。


「栞がそう言うんならいっかあ。おい、由佳。今日は特別三人で遊びにいってやるよ」

「はあ? 何その言い方っ。あんたは別にいなくてもいいんだけどー?」


 半眼で樹くんに嫌味を言う瀬尾さん。

 だけど心から言っているわけじゃなくって、仲がいいからこそ言える冗談だ。

 私にもそれくらいは分かる。


「俺だって、栞とふたりっきりがよかったんですけど」


 樹くんが何気なく放ったひとことに、どきりとした。

 私とふたりっきりが、そんなによかったのかな……?

 いや、瀬尾さんのジョークに対抗して言っているだけ、だよね。

 そんな風に私が自分を納得させていると、瀬尾さんは樹くんのことなど構わず、私に近づいてテンション高めにこう言った。


「マジ楽しみっ! 好本さん、放課後よろしくねー!」

「う、うんっ」


 瀬尾さんのノリに少し気圧されながらも、本当に楽しみにしてくれている様子がとても嬉しくて、私は笑顔になって頷いたのだった。
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