君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「あ……う、うん」


 自分の気持ちに戸惑っていた私だったけれど、樹くんにそう聞かれて慌てて返事をする。

 すると樹くんは、楽しそうに笑った。


「よっしゃ、じゃあ最初の予定通り本屋に行こーよ」


 ――そうだった。

 今日は本当は、ふたりで本屋に行く予定だったんだ。

 私は目当ての新刊を買って、樹くんにおすすめの本を紹介して、今まで読んだ本の感想を言い合って。

 とても楽しい、ふたりの時間。


「うんっ。行く!」


 想像したら信じられないくらい嬉しくなって、私は弾んだ声で返事をした。

 ――なんでこんなに嬉しいんだろう。

 樹くんはそんな私を見て、なぜか先ほどよりも笑みを深くすると、私の手を取った。

 ふたりでどこか行くたびに、繋いでくれる手。


「じゃあ早速行こ」

「うん!」


 ボーリングのボールやシューズを返却してから、私たちはモール内にある書店へと向かったのだった。

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