君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「うん、図書室にもよく行ってたよ。だけど、中学の頃ってそういうの茶化してくるやついるじゃん。『教室でこれ見よがしに本読んで、頭いいアピールかよ』なんて言われてさ」

「えー……。ただ読みたくて読んでるだけなのにね……」


 私はしかめっ面になってしまった。

 誰かにアピールしたくて読んでいるわけじゃないのに。

 そもそも、読書が頭いいことのアピールになるなんて思わない。

 ただ好きだから読んでるだけなのだから、ゲームや音楽を楽しむのとなんら変わらないと思う。


「ほんとそれ。でも中学生の頃の繊細な俺は気になってさー。あ、今でも繊細ですけど。だけどそっからなんとなく、人前で本読むのやめたんだよねー。めんどくて」


 中学生の頃、か。

 私も中学生の頃に、悟くんにラブレターを渡して「気持ち悪い」言われたことにショックを受けた。

 いまだに引きずっている。

 あの頃の今よりも少し幼い私たちは、とても傷つきやすく、そして他人を傷つけやすい存在だったんだろうなって今では思う。

 
「そうだったの……」

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