君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
「そ、そんな! 私の方こそお礼を言いたいよ……! 友達になりたいって言ってくれて、本当に嬉しかった……」


 私は首を大きく横に振りながら言う。

 本当にそうだ。

 私なんかに構ってくれて……。

 ――おっと、私なんかって思っちゃダメだった。


「そっか、ならよかった。由佳がさ、こんなに簡単に友達になってくれるんなら、早く声かければよかったわー!って嘆いてた」

「そ、それは申し訳ないことしちゃった……。私、人に話しかけるのが苦手で。つい壁を作っちゃうの」


 私がそう言うと、樹くんは真剣な面持ちになった。


「ね、栞。昔何かあった?」

「え?」

「いや、最初は人と関わたくない派なのかなって思ってたんだけど、仲良くなったら結構普通に喋ってくれるからさ。もしかして、人に踏み込んでいくのが怖いのかなって。なんかそうなったきっかけでもあるの?」

「…………」


 私は黙ってしまった。

 あの時のことを、樹くんに話すのは気が引けた。

 自分が「気持ち悪い」と誰かに思われたっていうことを、彼に言うのはなんだか惨めな気がしたから。


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