小説「グレイなる一族」
エリス「アエバ・・ダァ・・・ダア!」

彼女は、今からこっちに来ると言っている。しかし、二足歩行も四足歩行もできない彼女が私の側まで来るなんて事は出来ないのだ。人という生き物は、出来ないと思われる物事を前にするとあきらめてしまうか?なんとかその問題を乗り越えて行こうと努力するかはそれは人それぞれというものなのだが、「エリス」の場合は・・

エリス「ダダダ!あん!!」翻訳すると、「もう早く来なさいよ(怒、そしてほうじ茶を飲みましょうよ)となる。「セバスチャン」に対する、「ノリィーアントワネット」と同等のわがままであるとしか言えない。行くと言っていたのに次の場面ではまるで私が行くと言ったように怒っている・・血は争えないものであると深く思わされる出来事だ。しかも、何をするかまで決定事項のようにこちらの意向をまるで無視して決められている。ほうじ茶、年間契約をした静岡の一等地に静岡のカーネルおじさんが幾万の種を厳選して選びこみ熟成と研究を重ね一本一本人の手により24時間体制で管理され何年も育ったお茶の木からとれる茶葉の中から更にクラス分けされた中から、さらに等級化されたその年一番の出来栄えである「特一級の茶葉」それを、何日もかけて六甲のさらに奥地まで行って汲んできた「幻の名水」を、料理の鉄人道場六三郎氏が熟年の技を持って、沸かした「沸騰水」に丁寧に「特一級の茶葉」をブレンドしていく・・素晴らしきかなこんな光景、誰も夢みる究極の「ほうじ茶」・・・

もしもそんなお茶だっとしても私は飲めないので「エリス」の元へ行くことなどない。

そうこうしている内に、この「グレイランド」に次々と帰国してくる者がいる、「アーノルド」と「マーガレット」だ。「アーノルド」と「マーガレット」が帰ってくると、「エリス」はまた「エリススマイル」を万遍なく彼らに与え自分の虜にしてゆく。昨日まで、あんなに「グレイ様」「キャーグレイ様」と私を崇拝していた民衆の「アーノルド」と「マーガレット」までもがもはや皆「エリス」の虜になっているのだ。







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