小説「グレイなる一族」
抱っこされるのを拒否して泣いている「エリス」を見ながら、「セバスチャン」はなんだか勝ち誇ったような顔でニヤニヤしている・・「セバスチャン」は、非常に「エリス」の機嫌が良い時に対面しているので泣かれる事はなかったのだが、「エリス」に言わせると大人の対応をしただけと言っている事は可愛そうだから、彼には言わないであげる優しさを私は有している。

しかし、本来の「マロン」の歳の功が発揮されれば「セバスチャン」と「エリス」の関係よりも「マロン」と「エリス」の関係は、はたからみていて良くなっていくのは言うまでもない、言うなれば「セバスチャン」と「エリス」の親密な関係は、ただ「三日天下」なのである。

しかし、「エリス」の「エリススマイル」は脅威である。もうすでに、民衆の多くを魅了してしまった前回同様、私という由緒正しき誇り高き高貴な生き物の血を宿す一族の末裔の威光を薄れてゆくばかりなのである。

きっと、この問題は「ノリィーアントワネット使節団」が「ノリィー絶対共和国」に帰るまで改善される事はないのだろうなと私は思っている。そんな私に何かと気にかけてくれるのが以外にも「セバスチャン」だったりするから、不思議でならない。彼は「エリス」の虜になっているが、私の姿を見かけると何かと私の側に近寄ってくるのだ。多分彼の考えは、「グレイランド」の民衆達に私という「グレイランドの長」との親密さをアピールしたいのだろう・・

けれども、アピールする方法に問題があるのだ。彼は、私の身体を民衆の真ん中で抱き上げるとおもむろにキスを迫ってくるから戴けない・・そうこうしている内に彼の大きな唇は、タラコ唇へとその形を変えゆっくりと私の唇へ向かってくる。私はあまりのおぞましさに目を閉じているくらいしか出来ないのだが・・

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