小説「グレイなる一族」
そして、それを横で知りながら自分の帰宅準備を更に進めている「ノリィー」はさすがであり、どれ俺が手本を見せてやると言わんばかりに「セバスチャン」からせっかく「エリス」を取り上げたのに、やっと寝れそうだったのに・・と更に文句を言われ「エリス」に大泣きされてしまったのは、「マロン」の過信であろう。

私は、今回の「グレイランド」滞在中でなかなか心を通わせる事が出来ないでいる「プーちゃん」の元へお別れの挨拶をしに行った。相変わらず「プーちゃん」は、私という由緒正しき誇り高き高貴な生き物を怖がっているがそれでも来国された当初と比べると大分なれている様子だ。「セバスチャン」は、私の身体を抱き上げ前足と後ろ足をしっかり手に待つと「プーちゃん」にこう呟いた。

セバスチャン「ほら・・カエデちゃん・・グレイは動けなくて怖くないから頭とか撫でてごらん」

プーちゃん「・・うん。」

他に方法は無かったのだろうか?

「プーちゃん」はしっかり前足と後ろ足の自由が奪われている私という由緒正しき誇り高き高貴な生き物に触れると、さっきまで怖がっていたのが嘘のように私の頭や背中を何度も撫でてくれたのだ。この際、「セバスチャン」の取った方法は不問としよう・・

プーちゃん「グレイちゃん・・気持ちが良いね(笑)」

セバスチャン「ほーら・・もう怖くないでしょうが」

プーちゃん「うん・・ほんの少しだけ怖くなくなったよ」

「プーちゃん」のほんの少しだけという台詞は、言葉ではほんの少しに過ぎないのだが「プーちゃん」と私という由緒正しき誇り高き高貴な生き物とのペアにとって大きな一歩になった事はもはや説明するまでもなく、例えるならアポロ11号から初めて地球を見た宇宙飛行士が言った名台詞・・

「・・地球は青かった。」

に匹敵する出来事であったろう。「プーちゃん」が、「ノリィー絶対共和国」に帰国する前に少しでも友好を深める事が出来たのは、素晴らしい国交の成果と言う事ができこれからこの国交はどんどん良くなっていく事を想像すると、幸せな気分になったりもする。

その時!!「マロン」が洗面所に向かっていく足音が・・

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