小説「グレイなる一族」
私は、濃い霧の中を歩いていくと、空は次第に白夜に包まれていった
誰だ?誰かが私の顔を舐めまわしている

グレイ「やめろよ・・やめろよ・・」

目が覚めると、たくさんの白い羊達が私の身体の回りに集まっている。白い羊達の隙間
から、澄んだ青とときおり青の中を浮かぶ雲が見えた。

私は、白い羊達に優しく起こされるとゆっくり立ち上がった。私は瞳から見える全てが
信じられない事だが、いつもの「グレイランド」とはまったく違い、なにより驚いたのは・
私は二本の足で大地に立っている事だ。よくよく見てみると、私の前足は「セバスチャ
ン」や「グランマ」のように毛がなく五本の指で何でも掴める手になっていたのだ。

その時、近くから人影と共に掛け声が・・

アノル「アレン!・・・アレン兄さんってばさっきから呼んでいるのにまた羊飼いの仕事を
サボって、お昼寝していたのでしょ・・駄目な兄さんよね。」

グレイ「アレン??私がアレン???なんだ・・この小さいメスの生き物は・・」

まだ私の頭は、「ボー」っとした感じで目も虚ろにであったのだが、小さなメスの生き物
は私の右手を掴むと、

アノル「アレン兄さん・・しっかりしてよ。私が誰だか分かる?貴方の妹のアノルよ。
本当に目を覚ましてよ!!」

グレイ「アノル・・アレン兄さん・・」

私は驚いた事に声を出して、「アノル」の声を復唱してみると、人としての生き物の声
を発していたのだ。

グレイ「アレン・・僕がアレン・・」

アノル「そうよ・・貴方は羊飼いのアレキグ・レイサンドロス!通称アレンで私のたった
一人の兄さんよ」

小さなメスの生き物は、どうやら私の妹らしいのだ。しかし、何処となく「アーノルド」に似ている・・笑顔の可愛い女性だった。

アノル「もう羊達もいっぱい草を食べたでしょ・孵ろうよ」

アレン「う・・ん。」

アノル「セバース・・セバース・・何処に行ったの・・戻ってらっしゃい!」

「セバス」とは、一体なんであろうか?まったく検討もつかない、「アノル」が大きな声でセバスと呼ぶと向こうの山裾から、一匹の白い大きな犬が走って私と「アノル」の元へ
やって来た。







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