小説「グレイなる一族」
アノル「出来たわ・・今夜はアノル特製のシチューよ。」

と言って、シチューの入った皿とスプーンをテーブルの上に置かれた。もちろんスプーンとは、「銀のスプーン」の事だ。

アノル「セバス・・セバスもご飯よ・・はーい・・沢山食べなさい。」

マッサージに惚けていた「セバス」も「アノル」のご飯よという声にはものすごい反応を示し、まるで羊達を整列させた時のように燐とした目で「セバス」用の食器に向かっていたのは、滑稽でならない。

アノル「どうしたの?アレン兄さん食欲ないの?」

アレン「・・・・・・・・・・」

私は、温かいシチューなんて食べた記憶がなく猫舌なのでどうしようか?シチューを
覗き込みながら、考えていると・・

アノル「駄目よ・・ちゃんと食べなきゃ・・ほら・・」

と言って、自分の銀のスプーンにシチューを入れ、無理やり私の口に押し込んだのである。

アレン「うん???美味しい・・」

私の舌はかなりの猫舌で熱いものが駄目なはずなのに、まったく平気でそれどころかもの
すごくこの液体は美味しかったのである。

アノル「美味しいのは当たり前でしょ・・母さん直伝のシチューなんだから・・本当に昨日からおかしいわよ。」

食事が終わると、また「セバス」は私の元に寄ってきて仰向けになり今度は、満腹のお腹を撫でろとだらしのないポーズをしている。こんな所はまったく姿形は似ていないのだが「セバスチャン」と同じだと思えて滑稽でならない。

アノル「最近ガイア戦争の残党達が食うに困って、山賊になってこの辺りをうろついているから、気をつけてって隣の村の人に言われたわ」

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