小説「グレイなる一族」
「ノリス」はそう言うと、私の側まで近寄ってきた大分今日攻めてくる敵も引き始めた時の事である。

グレイ「・・なんだか・・頭の中に一瞬誰かが入ってきたようなんだ・・なぜ自分が此処にいるかさえわからない感じがするのだ。」

ノリス「しっかりしろ・・アラング・レイサンドロス・・此処は戦場だぞ・・お前が死んじまったら・・お前の大好きな女王ラーマ・グラは悲しむ所か・・この国は滅亡してしまうぞ・・お前はこのガイアきっての勇者なんだ。しっかりしろ!」

そうだ・・私の名前は、「アラング・レイサンドロス」皆には「グレイ」と呼ばれている。この戦争が始まり・・「女王ラーマ・グラ」が再び武器を手にするという苦渋の選択をした時、私は「女王ラーマ・グラ」の為にこの国の為に全てをかけて闘うと誓った者なのだ・・

日暮れと共にこの日の戦闘は一時の休息の時を迎えた。敵が引いた戦場は敵も味方も朱色で染め上げられた亡骸で溢れ、オレンジの夕日はすべての痛みを隠すように沈んでいく・・今日失われた命など数えても数えても分からないくらい私の心は朱色に塗られており、誰かの痛みなどもはや感じなくなっていた。

「ガイア城」から、退却の狼煙が上げられると残存している兵達を集め、引き上げを開始したのだが少し進むと大きな白い犬の亡骸が兵達の亡骸に混じって大地に倒れているのが見えた。おそらくこの白い大きな犬は、戦場に迷い込んでしまい敵の兵か味方の兵だか分からないが・・命を奪われてしまったのだろう・・良くみると白い大きな犬の下に更に小さな犬がまるで大きな白い犬に守られるよう横たわって大きな犬の方を心配そうに覗き込んでいた・・・

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