小説「グレイなる一族」
謁見の間に置いて、様々な議論を交わされている。私は、ただ「ラーマ・グラ」の表情を見ているが大臣達の纏まらぬ意見に彼女の表情は更に曇りがちになっている。今回の議会
の議題は、「ラーマ・グラ」の認めた敵国から身を守るだけの自衛権から、攻めてくるであろう敵を予想しての積極的自衛権への移行を容認するか否かである。

「ガイアに歴戦の強者揃い、先にバルト国に攻めに入りましょう・・」

「それでは、亡きアロン王の理念に反する・」

「では、ずっとガイアは攻め続けられなければいけないのか?」

「ガイアには、厚い城壁がある・・敵は超えては来れぬ」

「篭城で最後まで生き延びた国はありませぬぞ」

「今までどのくらいの人の命が奪われたのか?」

「バルト王の要求通り移住者を元の国に帰して、和平を試みるべきだ・・もう戦はたくさんじゃ・・」

「それでは、われわれ移住者にはガイアの為に死ねとおっしゃられるか?我々バルト国
から移住者がバルト国に引き渡されれば・・あの王の事・・きっと見せしめの為に全員処
刑されますぞ・・」

「何もそう決まったわけではあるまい・・全てが全て処刑されるとは限らない・・」

「一部の者が処刑されるならいいとおっしゃるか・・じゃあ誰がその一部になると言うのです。」

議会は混沌に染め上げられていく、議会の構成は前アロン王が決めた通り、元々のガイ
ア国から選出された大臣が七割、ガイア国以外の移住者から選出された三割で構成されており、皆議会の場では自由な意思で発言し、その発言の中から王たる者が最終的決議を下す事になっていた。

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