小説「グレイなる一族」

ラストエピソード 「刻の旅人」

ラストエピソード　「刻の旅人」

宮殿に放たれた火矢は、想像以上に早く広がってゆく・・玉座の間へ走ってゆく風を切る音も火の粉として、私の体に当たっては溶けていく・・火の粉を被る度に歩む足は止まりそうになるが、それでも想いを力に変えて進んでいく・・

玉座の間の扉の前に辿り着いた時、その扉を押して開けようとすると私の両方の手は「ジュー」と焦がされ一瞬ひるんだのだが、何とかその扉を開ける事が出来た。その扉が開かれた瞬間、中から灰色の煙と熱風が向かってきた。

グレイ「ラーマ！！ラーマ！！何処だ？」

私は久しく口にしてはならなかったその名を大きな声で呼んだ。「女王ラーマ・グラ」は、燃え盛る玉座の間の玉座に眠るように座っていた・・左手首から朱色を流しながら。

私は、玉座に座っていた「ラーマ」の身体を抱きしめると、何度もその名を呼んだ・・

グレイ「ラーマ！！ラーマ！ラーマ！」