小説「グレイなる一族」

「これで間違いないですか？」

アノル・ドーはノリィーの言葉をノートに急いで書いているので精一杯のようだ。

「間違いがあります。訂正してください！」

その瞬間、ノリィーは軽く舌を打ち面度くさそうな顔をした。アノル・ドーは、やれやれとい
うような表情で左手に消しゴムを筆箱から取り出した。

「仕事はグレイランドの長です。」

「どうして、警察にはそう言わないのですか？」

「あの時は気が動転していて・・」

容疑者の表情をノリィーはじっと観察している。これは検察官としての第六感と長年の感で嘘を言っているのかそうじゃないのかを図っているようだ。

「それと住所は、グレイランドです（汗）」

更に容疑者グレイは、警察の調書を訂正していくアノル・ドーは容疑者グレイが調書を訂正する度にあーあという表情で左手の消しゴムでノートをこすっている。

「他にまだ訂正する箇所はありますか？」

ノリィーは、容疑者グレイに尋ねた。

「種族は、由緒正しき誇り高き高貴な生き物です。」

私は、暗雲が立ち込めようとしているこの部屋で自信を持ってそう二人に告げた。

容疑者が警察と検察で違う意見を言うのは警察から検察に至るまでの時間があり、その時間が容疑者の頭を冷静にして、緻密な言い逃れを始めるのはよくある事だが、容疑者グレイの空気を読めない言葉は、この容疑者が限りなく黒に近い灰色であると、検察官ノリィーは長年の感とシックスセンスで疑い始めた。容疑者の名前がグレイであるのもその思考回路を加速させてノリィーの瞳はきらりと輝いた。

「それでは警察に補導される前の自分の行動を説明してください。」

「はい・・あの日私はグレイランドのドアが開いていたので、まだ食べた事のない鰹節ス
ティックを買いに行くために最強線の電車に乗りました。その電車はすごく混んでいて
途中のＫ1駅につくと、電車の中の生き物が大勢でドアから出ていくので一旦下りて再度
電車に乗り込もうとしたら、女子中学生に貴方猫ですよね・・と騒がれて駅員に赤ちゃん
抱っこで連れて行かれました。」