小説「グレイなる一族」
「それは猫だから仕方ないですね」

「違う僕は猫じゃない」

「でも猫ですよね。」

「だから猫じゃないと言っているでしょ!」

私はたまらず大声を出してしまった。けれども警察でも自分は白だと言っているのに信じてもらえず検察でも同じように自分が猫じゃないかと疑われる事は苦痛である。

容疑者はほんの少し問い詰めただけで興奮しているやっぱりこの容疑者は限りなくまた一歩黒に進んでいく灰色だとノリィーは確信した。

「警察からの証拠品には、拘置所内で貴方が二日で全部食べてしまった。鰹節お徳用パック100gの空き袋が届いています。こんなに鰹節を短時間で食べられるのは自分は猫だと証明していませんか?」

検察官ノリィーは、容疑者に対する攻め方を変え容疑者グレイを追及してゆく・・補佐官
のアノル・ドーは、そのマシンガントークに遅れまいとノートに右手の鉛筆で記録していく・・ただそれだけで精一杯だ。

「ただ鰹節が好きなだけだ。それだけで僕を猫だというのですか?」

「いいえ・まだ証拠はたくさんあります。貴方は拘置所内で顔を洗いましたね。そうしたら次の日雨が降ったという記録もあります。猫は顔を洗うと次の日雨が降ると言われています。この事が貴方を猫だと証明していませんか?」

「たまたま顔を洗った次の日に雨が降っただけだ!毎日顔を洗っていればいつか雨ぐらい
降るでしょ・・僕が顔を洗って雨が降るのならお天気キャスターなどいらないでしょ」

「雨が必ず降ると分かっていてもお天気キャスターは必要ですよ!お天気キャスターがいなくなったら、お天気キャスターを見る事を生きがいとしている世の中の中年はどうなりますか?」

「・・・・・・・・・」







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