小説「グレイなる一族」

謁見室に通されると、防弾ガラス一枚向こうには、思いっ切り二日酔いで鼻ちょうちんを垂らし、汚いジャージ姿で居眠りをしながら、椅子に座っているセバス・チャンが見えてきた。

彼に過度の期待を膨らませた私が悪いのか？

彼は私が到着するのが気が付くと、右手でまだ眠い目を無理矢理起こすかのように起きだした。私と言う由緒正しき誇り高き生き物は、そんな彼に嫌味を込めて挨拶した・・

「オハヨウ！」

「ファーい・・」

驚いた事に嫌味を込めているにそんな嫌味などにひるむ事がないのか？それともそれさえ気付かないほど眠かったのか・・

「それでは、明日から裁判ですね。検察はどのように貴方を起訴とする決定をしたのか・・ゆっくり思い出しながら、話してもらえますか？」

さすがは寝起きと言えでも阿部寛じゃなくてもくりおこうへいじゃなくても、国選といえども
弁護人は弁護人であるとちょっと、セバス・チャンを私は見直した。

私は、検察官ノリィーとの攻防戦をなるべく正確に彼に語り始めた。

彼の返信を聞いていると、検察官ノリィーはその世界では並ぶ事のない検察官であって今までに彼女に起訴された猫は必ず猫だと勝訴しているらしい・・

「素直に私が猫だと認めれば不起訴にしてあげると言っていたんですが、私は猫じゃないんで断ったんですよね」

「それは、司法取引って言うんですよ。」

「え！！脂肪取引！！どうして私の脂肪を取引するんですか！それにこのお腹も背中の肉は脂肪ではなく貫禄なんだ！」

「落ち着いて下さい。字が違います・・脂肪取引ではなく司法取引ですよ」

「検察が被疑者に対して、素直に罪を認めれば減刑するというのを、司法取引というんですよ。今のグレイさんの場合、状況証拠もばっちりなので司法取引するのも貴方にとって、有効な手段の一つなのですよ。」

「だったら検察官ノリィーは、なぜちゃんと司法取引なら司法取引と言ってくれないのだ。私は、てっきり彼女が脂肪を欲しがっているものだと・・」

「グレイさん！普通は司法取引をする際、そんな事をいちいち言葉にしないのですよ。
大人の世界はいつもこんな感じなんですよ」

「いや由緒正しき誇り高き世界はそうじゃないんだ！」