小説「グレイなる一族」
裁判長机に隣接している机にはこの裁判の陪審員のクジが偶然当たってしまい、こちらも
明日から旅行なのというような衣装でマガ・レットが座っている。マガ・レットは歳の頃は、検察官ノリィーよりは幾分若い女性であり、色白健康真円向日葵のような女性である。

そして、証言台から後ろの方向は傍聴席があるのであるが今日はガラガラで誰もいなくて、唯一左隅の方に深いフードを被った畑帰りのような衣装の老婆が傍聴しているだけだ・・

「だーだーだあだあああ」

裁判長のマー・ツワンが声を出した。それに少し遅れて陪審員のマガ・レットが

「それでは裁判を開始致します。と裁判長は告げています」

何と陪審員マガ・レットは、陪審員兼裁判長専属通訳だったのだ。

「だだだあああぼん!」

「名前と住所を言って下さいと裁判長は告げています」

今度は、ほぼ同時通訳だ。同時通訳は時に音声が重なると何を言っているか分からない
が、陪審員マガ・レットの通訳はよく聞こえる。

「名前はグレイです・・住所はグレイランドです。」

「だんだんぽー」

「アンタ何したのよと裁判長は聞いています。」

今度も見事な呼吸で陪審員マガ・レットは裁判長マー・ツワンの言葉を翻訳していくつい
でに桃井かおり風味の演戯力も光っている。

「最強線のK1駅でいきなり猫と間違われました。」

私は簡単に説明すると・・

「アンタ猫じゃん!!」
「だいだいあー」

陪審員マガ・レットは通訳が一生懸命すぎてなんと裁判長マー・ツワンが言葉にするよりも早く翻訳してしまった。

「だっだだあだdっだだだっだだああああーああ」

「すいません!すまんとです!」

裁判長マー・ツワンは、どうやら早すぎた翻訳に出番を奪われた感じで、陪審員マガ・レットを怒っている。

「はい・全自動翻訳機の用意ですね、ただいますぐに準備します。」

裁判長マー・ツワンは、陪審員マガ・レットが法廷に全自動翻訳機を準備させると彼女に
命令したのだ。

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