小説「グレイなる一族」
エピソード四拾誤「グレイなる境遇」 

I am GALY・・
私の名は、グレイ

時節は、梅雨も深まり南から大きな風と共に「台風」なるものがこの「グレイランド」に
やってくるかもしれない、夕食も終わって休憩している時の事である。

いきなり、異世界から

野良「みゃーんみゃーん」

という声が聞こえて来たので、「グレイ広場」の窓から外を覗いてみると、以前私と威嚇
勝負した野良がさも悲しげに鳴いているのである。

野良は、以前の威嚇勝負の時よりも身体は一回り近く痩せ細っており「台風」が奏でる風の音にさらされ誰かに助けを求めているようなのだ。

野良「みゃーんみゃーん」

直訳すると、ひもじいし雨で濡れる・・はぁ・・と言っている。あの自由で強かった野良の光がどんどん弱く輝いているようなのだ。私は、「グレイ広場」の窓から野良の様子は
伺えるのだが、野良の為に何かをしてあげる事など出来はしないのが、歯がゆくてならない・・一度は敵として戦った(その時は、勝利した)相手でも、昨日の敵は今日の友という言葉どおり、野良に何かしてやりたくて仕方ないのだが、何も出来ない無力な存在だ。

でも、ただ野良の為に何が出来るのか?考えてみたいと思う・・

私に与えられている鰹節の半分くらい一度くらいなら、野良に与えてもいいかなと一瞬考えてみてよく考えて、与える方向で進んではみるが・・あいにくこの「グレイランド」は長方形の建造物の二階にあるので、鰹節を落としても「台風」の為、四方八方に散乱し野良の為に届ける事などままらない・・というかそもそも「グレイ広場」の窓を私は開けられない・・

そうこうしている内に異世界の風はその強さを徐々に増し、野良にとって過酷な状況を増してゆく異世界の風がその強さの頂点を迎える頃、風と風の摩擦音で野良の泣き声はこの「グレイランド」に、届かなくなっていったのである。

私は、自然と野良の身がどうなったのか?心配でならなくなりずっと、その姿を暗闇の
中に探しているのだがもはや野良が何処にいるのか?見つける事さえ出来ないのが無
力でならない・・

何度も何度も「グレイ広場」に定期的に来て、野良の姿を探して見るのだが雨と風は強く異世界を吹き付けており、更に野良の姿を探すのは困難であった。

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