隣は秘密の花先輩
彼は、私の顔をじ、と見つめたまま呟くような声で、それでも若干の八つ当たりを私に目掛けて放つ。
「なんでお前馬鹿なのに馬鹿が読めそうもない苗字なんてしてんだよ」
「私も田中がよかったよ!テストの時とか、普通に名前書く時とか超面倒くさいもん!」
「花でいいだろ。」
「え」
突然の爆弾。目をぱちくりする私を放って、未だに頬をほにほにする花先輩が再び言う。
「花でいいじゃん。簡単だろ。」
「は、花 花ってこと?」
不意打ちのそれはあまりにも心臓に悪い。ドドドドと新幹線が心臓目掛けて突っ込んでくる。
頬に熱が集まる。触れられた場所から伝わってしまうんじゃないか、と冷や冷やする。