隣は秘密の花先輩
家の鍵の隣に並ぶ鍵は、花さん家の合鍵。いつから持たされているのかはもはや記憶になし。
「おじゃましまーす」
返答なし。だいたいいつもそう。
階段を上がって、2階の奥へ進む。コンコン、と扉をノックしても返答なし。こちらもだいたいいつも通り。
「夕ご飯の配達でーすHanaEATSでーす、なつって」
真っ暗な部屋で映画を観ていた彼が、扉を開けた先で光を洩らす私を鬱陶しそうに見つめ。
「つまんな。」
と呟いてそのまま無視して、映画鑑賞を再開した。慣れっこです。私はそのまま彼の部屋に入り、テーブルの上にご飯を置く。
ふたり掛けのソファーにゆったりと腰掛け、壁一面にフィルターを垂らし、そこにプロジェクターで映画を流しては、優雅に趣味を堪能している男の隣へドカ、と座る。
「……今日”アホ面”って言ったでしょ。」
ぼそ、と呟けば。