いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
一瞬、都さんの動きが止まった。
だけどすぐに忙しく動き出す。
勝手に机の上に出しっぱなしの俺の荷物をまとめている。
「そう思う?」
「思うってか、確実にそうだよね」
「貴方のためよ」
都さんがクイッとメガネを持ち上げた。
マジメモードに入った時の(まぁいつもマジメなんだけど)都さんのクセ。
「時間的余裕があるとロクなことにならないでしょうから」
「……ロクなことって。せめて早く、あの根も葉もない熱愛疑惑を否定して欲しいんだけど」
「……」
口を噤む都さん。
竜生と優里の疑惑はすぐに否定したけど、なぜか俺とエマの熱愛報道に関しては沈黙している事務所。
…まぁ、なぜかは大体、見当がつく。
「今公開してる映画が、俺とエマが共演してるから。いい宣伝になるとか思ってんでしょ」
「……別に、わざわざ否定しなくても。これ以上何もなければすぐに消えるわよ、こんな噂」
都さんの返事は、俺の言葉を肯定するものだった。