いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
「どこ行く気?」
楽屋前の廊下で都さんと遭遇した。
「…すみませんちょっと…優里の所行ってきます」
正直に言うと、都さんは表情を変えないまま「ダメよ」と即答する。
「今は仕事中です。勝手な行動は許しません」
「ごめん…俺から後でお詫びはします。できるだけすぐに戻ります。緊急事態なんです」
「緊急だろうが何だろうが、あなたが行って何ができるの?」
都さんが腕を組んで俺を見据える。
「事の騒ぎを大きくするだけなら、何もしない方が彼女のためよ」
「…そうかもしれないですけど」
彼女のためとか事務所のためとか、映画のためとか
常に世間の目に晒される特殊なこの世界では、想像以上に我慢を求められることが多い。そしてたぶん、その我慢をきちんと出来るのが大人だ。
だけど…
「俺…まだそこまで大人になれないんで。行ってきまーす!」
「ちょっと…YUU!?」
そういう大人はこれから目指すけど。今は
俺が絶対優里を守りたい。この手で直接、守りたい。