いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
「…とは言ったけど優里、制服着てるのに一回家帰って大丈夫?」
「…うん、大丈夫。まだ早いし」
ついさっき、采斗の後をつけて1人で歩いた道を、今度は采斗と2人で歩く。
まだ早いしっていうのは半分ほんとで、半分嘘。
本当はなんとなく、采斗と歩きたかったから…とは、言わないでおく。
「というか…采斗」
「なに?」
「手離してくれる?」
私の右手は歩き始めた時からずっと、采斗の左手にしっかり握られていた。
離そうとしても、すかさず力をこめてそれを阻止してくる。
「やだ」
「やだって子供みたいな…前も言ったけど采斗、自分の立場全然わかってないよね!?」
「大丈夫だよ、変装してるし」
「それにしたって…!」
私は野次馬につけられていないか周囲をしっかり確認した。
「今のところ尾行とかはされてないみたいだけど…!」
「ふっ、なんか優里、俺のマネージャーみたい」
「采斗が危機感なさすぎ「あ、間違えた」
采斗が私の口を空いた方の右手で塞いで、悪戯っぽくサングラスの奥の目を細める。
「マネージャーなんかじゃなかった。俺の奥さん、だよね?」
「またそんなこと言って!違うから!!」
「あ、また間違えた。“未来の”奥さんだった」
「っだから…!!」
采斗はやっぱり変わったと思う。
でもきっと、変わった部分もあるし、変わらない部分もあるんだろう。
でもその瞬間は、一般人と人気俳優の“YUU”じゃなくて
幼なじみの柏木優里と結城采斗に戻れた気がして。
私はちょっと、嬉しかった。