いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
切なげに瞳を細めて私を見る采斗。
グラッと心が揺れる。本当に想われている気がして――
そう、きっとこれは…気のせい、なんだ。
だって、考えれば考えるほど、采斗が私なんかのこと、好きになんてなるはずないって思う。
きっと人気俳優が何の取り柄もない一般人を好きになるなんて、ドラマの中だけでの話で。
“嘘をつくのも一流です”
“貴方のことを好きだと、本気で思いました?”
佐保さんの言葉の方が、よっぽどリアルで、現実的だ。
「…優里?どうしたの?何で泣きそうな顔…」
「…嘘つき」
「え?」
「佐保さんにだって、同じようなこと言ってるの?」
「…はぁ?何でここで都さんの名前が…」
「柏木?」
トントン、とドアをノックする音に続いて、一岡の声がした。
「どうした?なんか声するけど…電話でもしてんの?」
「なっ、何でもない!今行くから!」
采斗の胸を押して、ベッドから降りる。
采斗はまだ何か言いたげな顔をしていたけど、無視して采斗の部屋を出た。