いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~
「なんか変じゃね?柏木」
「え……?」
学校が終わって、駅のホームで電車を待っているとき。
さっきまでスマホゲームをして「ああっ死んだぁああ!」なんて叫んでいたはずの奴は、気づいたら私の顔をじっと見ていた。
ちなみに稟琉は、月1の調理部の活動の日で今日はいない。
「べ、別に変じゃないよ、普通だよ」
「そお?なんか顔色よくねーし、いつも上の空っていうか。こないだの学校休んだ日くらいからじゃね?もしかしてまだ体調悪いとか?」
「…だいじょぶ、元気だよ」
一岡は、実は人のことをよく見ている。
それに助けられた日もある。でも今日は…逆だ。
「あっ電車来た。じゃ、また明日ね一岡」
今はそっとしておいてほしい…
「…またそっち方向?」
「うん、しばらく…っていうか、もうあのマンションには戻らないかな」
「ふーん」
一岡に軽く手をふって、ホームに滑り込んで停止した電車に向かって足を踏み出す、と。
「帰さねーよ」
「っは!?」
一岡にグイッと腕を引っ張られた。
「ちょっと何すんの!?」
「腹減った」
「はぁ?」
「だから腹減った!つきあえ!」
「ちょっ…待ってってば!」