いきなり人気俳優の婚約者になりました。~絶対秘密の同居生活~






―――…




「つきあえって…ここ?」



一岡につれてこられたのは、仕事帰りのサラリーマンに密かな人気を誇っていそうな小さなラーメン屋だった。



「おう!俺一押し!ここの味噌ラーメンが神なんだよ!食え!」


「お…おう」



手慣れた様子で食券機を操作し、【味噌ラーメン】の券を2枚買う一岡。




「特別に奢ってやるよ!」


「え、いいよ払う!」


「気にすんなって~!神だから俺!」




強引に押し切った一岡に促されるままカウンター席に隣同士で座る。




少しして、おいしそうな味噌ラーメンが運ばれてきた。




「…どう?どう!?」




ズズッと麺をすする私を、期待に満ちた瞳で見つめてくる一岡。




「ん…めちゃくちゃおいしい!」


「だろ!?」




まるで自分が作ったみたいな喜びようだ。




「ふっ…」


「ん?何笑ってんだよ?」


「いや、これ一岡が作ったわけじゃないでしょ」


「そ、そうだけど…見つけた俺すごい!みたいなヤツあるだろ?」


「たしかに。すごい一岡。よく知ってたね、こんな隠れた名店」


「だっろー?」




堂々と胸を張る一岡にまた笑ってしまう。



そんな私にふっと目をわずかに見開いて、一岡がなぜか、クルッと急に正面を向いた。



「ん?どうしたの」


「…なんでもね」





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